パリに住む人とバゲットとの関係
パリとバゲットの切っても切れない関係とは?
パリらしい生活それは?
パリらしい生活の中で、最もパリっぽいイメージは、それは「パリジェンヌはむき出しのバゲットを小脇に抱えて歩いている」という事実です。 また、パリで引っ越しを考える人は、引っ越し先のそばに美味しいパン屋があるかどうかが、それが引っ越し先を決定する第一の要因だとも言われているそうです。
そして「ミッドナイトインパリ」という映画の中でアメリカからパリに憧れて来た主人公の脚本家が、 「セーヌ河のほとりをバケットを小脇に抱えてパリジャンのように歩きたい」と言うセリフを言っているので、バゲットはやはりパリを代表しているのでしょう。
バゲットがユネスコの無形文化財に
フランスの「バゲットの技術と文化」が2022年11月末に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されて マクロン大統領はバゲットをバトンに例え、「先祖から子どもへと手渡されるもの。 フランスのサヴォワール・フェール(技能・知識)のエスプリがすべてつまった唯一無二の存在だ」と祝福した。
フランスのバゲットの現状
しかし、食生活の多様化などを背景にフランスのパンの消費量は減少傾向をたどっている。昔ながらの街のパン屋は70年代から90年代までに約2万軒減ったといわれる。 現在バゲットはフランスで1年に約100億本売れている。パン連盟が21年に国内在住の2125人に調査したところ、75%が毎日食べ、71%は購入したら待ち切れずに目的地に着く前に食べてしまうと告白した。 以上のフランスの傾向からパリも大体同じような傾向だと思われる。
<目的地に着く前にバゲットを食べてしまう男>
パリのバゲットの歴史
バゲットの発祥地としてのパリ バゲットの原型ができたのは18世紀初頭で、この時期にパリで小麦粉の品質向上やパンの製法の変化があったと考えられています。 パリは、この新しいパンのスタイルの発祥地の一つと見なされています。 19世紀に入ると、パリでバゲットの特有の形状が確立され、これが急速に広まりました。パリのベーカリーは、バゲットを製造し、市民に提供するための重要な役割を果たしました。 この時期には、バゲットがパリの日常の食事に組み込まれ、人気を博するようになりました。
20世紀に入ると、バゲットはますます一般的になり、パリの街角のベーカリーや市場で手に入れることができました。 バゲットの形状や製法が標準化され、どのベーカリーでも同様の美味しいバゲットが提供されるようになりました。 1960年代以降も、パリではバゲットがフランスの伝統的なパンとして根付いています。 バゲットは、日常の食事だけでなく、特別なイベントやお祝い事にも欠かせない存在となりました。
バゲットの特徴は
長い形状が特徴的
バゲットは、先細りで長い形状が特徴的です。通常、長さは約65〜80センチメートル、直径は5〜6センチメートル程度です。 この形状は、焼きたての美味しさを引き出すためのものであり、外側はパリッと、内側はもちもちとした食感を生み出しています。
外側パリッと、内側モチっとした柔らかさ
バゲットの外側は、焼きあがったときにパリッとしたクラスト(外皮)が形成されます。これは、高温で焼かれることで得られ、食べる際に独特の歯ごたえと香りを提供します。 バゲットの内部は、外側のパリッとしたクラストに対照的に、柔らかくもちもちとした食感があります。 バゲットのクラストは薄く、中の生地とのバランスが取れています。これにより、パリッとした外側ともちもちとした内部の調和が生まれ、バゲット全体の食感が向上します。
<気孔のいり具合はかなり荒いな>
長時間発酵が、より香り豊かに
一般的に、バゲットの生地は長時間発酵させられます。この長時間の発酵により、生地がより香り豊かで風味深いものになります。 バゲットは、小麦粉、水、塩、酵母の基本的な材料で作られることが多いです。このシンプルな組み合わせが、バゲットの独特の風味を形成しています。 このシンプルな組み合わせの良さはドイツのビールと相通じるところがあるのかな。ともに歴史あるヨーロッパの大国です。
パリのバゲットコンクール
コンクールで優勝で賞金と、1年間大統領官邸に納入の権利
賞金として4,000ユーロが授与され、今後1年間、大統領が食すバゲットとしてエリゼ宮におさめる権利を獲得する。 コンクールで対象になるのは「伝統のバゲット」、つまり職人による昔ながらのバゲットで、その基準は1993年の政令「(伝統のパン)」で制定されている。
ドイツはビール、フランスはバゲットはそれぞれのお国柄が
フランスはバゲットを法律で定めているというのは、ドイツの「ビールとは麦芽、ホップ、水、酵母のみで造られるもの」という、国法のビール純粋令を思い出させる。
このバゲットの政令の背景には70年代の食の工業化があった。合成添加物を使ったパンが量産されて価格が下がり、職人の立場が脅かされた。パンの品質も低下した。 「伝統のバゲット」は小麦粉、酵母、塩、水を材料に、発酵材以外の添加物は不使用。販売所で製造・焼成され、冷凍も禁止。
バゲットコンクールを始めたのは、「伝統のバゲット」を守るため。
「コンクールを創出したのは『伝統のバゲット』を広める一案でした」と後援するパリ製パン製菓連盟は説明する。 職人の技術を競うコンクールでは、通常のバゲットよりも細かいルールがあり、長さは50〜55センチ、重さ250〜270グラム、小麦粉の塩分量は小麦粉1キログラムあたり18グラムまで。 テイスティングでは焼き加減や味、クラム(中身)、気孔の入り具合、見た目の5項目で2段階で評価される。
美味しいバゲットを2週間続けて食べて幸せ
パリ15区「Aux Delices du Palais(オ・デリス・デュ・パレ)」
もともとパン好きだったのですが、いわゆる食パンがメインでした。 2016年にパリに行った時、2014年パリで最もおいしいバゲットを選ぶコンクールで優勝したパン屋さん「Aux Delices du Palais(オ・デリス・デュ・パレ)」に2週間通いました。 1998年にお父さんが、2014年には息子さんが、親子2代でパリバゲットコンクールで優勝したお店です。場所はパリの南部、パリ環状線と並行するように走るトラム路線、Brune大通りの一角にあります。
<オ・デリス・デュ・パレ>
ホテルの近所だったので、2日目の朝にバゲットを買いに行きました。 食べると最高の味で日本で美味しいとか言われた店でも買ったことあるのですが、パリのバゲットは全然別物なのですね。 お昼にサンドイッチにして食べるときは普通サイズ、別の昼食の予定があるときは朝食だけなので、細いのか、ハーフを買っていました。 バゲットは焼いてから4,5時間が美味しいといわれるので、お昼までに食べ終わるようにしていました。
写真はルーヴル美術館で購入した、バゲットのサンドイッチです。これを参考に作っていました。 もちろんバゲットは、私の手作りのサンドのバゲットの方が美味しいですよ。
それ以降毎朝買いに行って、大体バゲットを買っていました。 店でくれる袋はバゲットが半分しか入らないので、むき出しでそのままパリジャン気取りでホテルまで持って帰っていました。 しかし、4日目ぐらいからそのまま持つのは不衛生な気がして、持って行ったビニールをかぶせて運ぶようになりました。なかなかパリジャンには成れないです。
フランス大統領と同じバゲットを2週間
この店では,2回クロワッサンを買いましたが、美味しいのですが、やはりバゲットですよ。 この店は前章に書いた2014年のバゲットコンクールで優勝したので、2015年(前年)は大統領のフランソワ・オランド(残念ながら知名度は低いなあ)が毎日食べていました。 困ったのは、この店は日曜日がお休みなので、別の店に買いに行きました。それでも近くに美味しい店があると、近所の店もそれなりの水準になっていたね。 2週間続けてこの店のバゲットを食べれたのは、今から考えるとかなり幸運でした。
<ある日の朝食メニュー(チーズの上に切っておいているバゲットが、このお店のバゲットです。)>