高田家遺産相続物語 第2幕「遺言を持つ男」が静かに始まる。

遺産相続泥沼1 情報

亡くなった人への想いから、次第に残された遺産への思いが強まる

久子が亡くなってから、しばらくの時間が過ぎていた。

残された遺産は、預貯金二千万円と、久子が暮らしていたマンション。

合わせれば五千万円ほどになる。

決して、人生を変えるほどの大金ではない。

しかし、人は失ったものより、目の前に残されたものに心を奪われることがある。

高田家にも、少しずつそんな空気が漂い始めていた。

誰も、最初から遺産を奪い合おうと思っていたわけではなかった。

ただ、それぞれの胸の中に、

「久子は最後に、誰のことを考えていたのだろう」

という思いがあった。

そして、その思いが、少しずつ疑いへと変わっていった。

遺言を持つ男、光一の前に出現

ある日の夕方だった。

光一の携帯電話が鳴った。

知らない男からだった。

「高田光一さんでしょうか」

「……そうですが」

「久子さんのことで、お話ししたいことがあります」

光一は一瞬、黙った。

久子の名前を聞くと、どうしても遺産のことが頭に浮かぶ。

「どんな話ですか?」

「直接お会いしたほうがいいと思います」

男は、それ以上詳しく話さなかった。

数日後、光一は男と会った。

男は五十代くらいに見えた。

派手な服装でもなく、特別に怪しい雰囲気があるわけでもない。

ただ、どこか慎重な話し方をする男だった。

「私は、久子さんとは昔からの知り合いでした」

「どんな関係だったんですか?」

「仕事を通じて知り合いました。その後も、時々連絡を取っていました」

男は鞄から一通の封筒を取り出した。

古びた白い封筒だった。

光一は身を乗り出した。

「それは……」

「久子さんから預かったものです」

「俺に?」

男は首を横に振った。

「誰に渡せばいいのかは、言われていません」

光一の顔から、わずかに表情が消えた。

「じゃあ、何のために?」

男は封筒を見つめた。

「久子さんは、こう言いました」

そして、ゆっくりと続けた。

「もしものことがあったら、これを必要な人に渡してほしい、と」

「必要な人……?」

「はい」

光一は封筒を見つめた。

宛名はなかった。

差出人も書かれていない。

ただ、封がされたままになっていた。

「中身は?」

「知りません」

「本当に?」

「開けるな、と言われています」

光一は黙った。

その瞬間、胸の奥で一つの考えが浮かんだ。

――これが遺言だったら。

遺言を持つ男の話:それに対するそれぞれの思惑

その話は、光一からすぐに家族の耳に入った。

最初に反応したのは光子だった。

「久子さんが残したもの?」

「そうらしい」

光一が答えると、光子はしばらく黙った。

そして、小さな声で言った。

「……私宛てかもしれないわね」

孝子が驚いて顔を上げた。

「どうして?」

「久子さんとは、あなたとは別に、私にしか話していないことがあったから」

「そんなこと、姉さんから聞いてないわ」

「久子さんが、あなたに全部話す必要がある?」

光子の言葉に、孝子の表情が変わった。

「私は、そんな意味で言ったんじゃない」

「でも、久子さんが私を頼りにしていたことは事実よ」

二人の間に、微妙な沈黙が流れた。

その様子を、光一は黙って見ていた。

そして心の中で笑った。

――これでいい。

みんなが勝手に疑い始めればいい。

光一の策略:静かに、しかし、確実にそれぞれの疑惑を揺さぶる

光一は、それから少しずつ家族に違う話をするようになった。

光子には、

「久子さん、かあさんのことをかなり気にしていたみたいだよ」

と話した。

「やっぱり……」

光子の目が変わった。

「何か聞いたの?」

「いや、詳しくは知らないけど」

光一は、わざとそこで話を止めた。

孝子には別のことを言った。

「伯母さんの本当の意思を無視したら、あとで後悔するんじゃないか」

「どういう意味?」

「いや……俺もよく分からない。ただ、伯母さんは何か考えていたような気がする」

そして遥には、

「遺産を守らないと、誰かに取られるぞ」

と言った。

「誰かって誰?」

「さあな」

光一は笑った。

「でも、人間って金が絡むと変わるからな」

遥は、その言葉を聞いても何も答えなかった。

ただ、光一の顔をじっと見た。

その視線を、光一は避けた。

プロフィール
ツネジイ
ツネジイ

はじめまして、70代男性です。

急に小説を書き始めました。
パリ旅行関連の情報を書いていましたが、間違った情報を発信してはいけないと強いプレッシャーを感じていました。
それで、自由に書ける小説を始めてみました。。
小説は、本当は別ブログにすべきですが、どこまでできるか分からないので、このブログ内に描きます。
良かったらご覧ください。

仕事を終えたのを機に、憧れだった夫婦のパリ旅行を実現しました。
出発まで1年かけて図書館で徹底的に調べ、実際に現地を2週間強体験。
その中で感じたのは、事前準備をすればパリは大人世代でも安心して楽しめるということでした。

このブログでは、
・初パリの夫婦旅・一人旅でも安心できる情報
・70代目線での注意点や移動のコツ
・実体験に基づくリアルなアドバイス
をお伝えしています。
これからパリを訪れる方の、不安を減らし、旅をより充実させるお手伝いができれば嬉しいです。

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