姉の家の片づけをするため、家に入ろうとするが、躊躇する。

葬儀編 情報

 姉の久子が亡くなってから、孝子は何度も姉の家の前まで来ては、門の前で立ち尽くした。

 鍵は手元にある。入ろうと思えば入れる。けれど、玄関の扉を開けることが、どうしてもできなかった。

 久子は、誰にも看取られずに亡くなった。

 発見されたときには、すでに時間が経っていた。警察や葬儀の手続きが済み、ようやく家の中を整理してよいことになったものの、孝子の胸には、別の重さが残っていた。

 ――近所の人に、迷惑を掛けてはいけない。

 姉の死があった家なのだ。臭いや害虫など、周囲への影響がないよう、専門の業者に頼んで清掃をしなければならない。家財道具も処分し、部屋を空にしなければならない。

 頭では分かっていた。

 けれど、その「整理」という言葉が、孝子には冷たく響いた。

 そこには、久子が何十年も暮らしていた。

 食卓も、古い時計も、台所の小さな傷も、全部、姉が生きていた証だった。

 業者との打ち合わせを終え、孝子はもう一度、玄関の前に立った。

 鍵を差し込む。

 カチリ、と音がした。

プロフィール
ツネジイ
ツネジイ

はじめまして、70代男性です。
仕事を終えたのを機に、憧れだった夫婦のパリ旅行を実現しました。

出発まで1年かけて図書館で徹底的に調べ、実際に現地を2週間強体験。
その中で感じたのは、事前準備をすればパリは大人世代でも安心して楽しめるということでした。

このブログでは、

・初パリの夫婦旅・一人旅でも安心できる情報
・70代目線での注意点や移動のコツ
・実体験に基づくリアルなアドバイス

をお伝えしています。

これからパリを訪れる方の、不安を減らし、旅をより充実させるお手伝いができれば嬉しいです。

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