遥の純粋な想い、おばさんの遺産をおばさんが思ったように残したい
遥――「これ以上、遺産を減らさせない」
遥は、光一の変化に最初に気づいた。
「兄さん、最近おかしいよ」
孝子にそう言った。
「何が?」
「お金の話ばかりする」
孝子は黙った。
光一が金に執着していることは、以前から分かっていた。
しかし、今回は何かが違う。
遥には、直感的に分かった。
――この人は、何かを企んでいる。
だからこそ、遥は動いた。
通帳や不動産関係の書類を確認する。
久子が残した書類を一つずつ整理する。
誰かが勝手に処分したり、持ち出したりしないようにする。
そして、相続に関係する情報をできるだけ正確に把握しようとした。
「伯母さんのお金を、これ以上減らしたくない」
遥は孝子に言った。
「久子さんが一生懸命働いて残したものだから」
その言葉には、強い意志があった。
遥は、自分がたくさん欲しいわけではなかった。
むしろ逆だった。
「私は、自分の取り分が増えなくてもいい」
そう言った。
「でも、誰かが勝手なことをして、おばさんが残したものを減らすのは嫌」
それが遥の戦いだった。
孝子の「姉が望んだとおりの公平な相続」にしたいという強い思い
孝子――「姉さんが望んだ相続にしたい」
そして、孝子にはもっと強い思いがあった。
金額ではない。
姉の気持ちだった。
久子と孝子は、性格こそ違っていたが、長い人生を姉妹として歩いてきた。
久子が亡くなる直前、孝子は病室で姉の手を握った。
そのとき、久子はかすかな声で言った。
「孝子……みんなが困らないようにしてね」
それが最後の会話だった。
だから孝子は、どうしても姉の意思を知りたかった。
「姉さんが誰にいくら残したいと思っていたのか」
それを勝手な想像で決めたくはなかった。
正式な遺言があるなら、それに従いたい。
なければ、法律に従って公平に分ければいい。
ただ、それだけだった。
しかし、その「公平」という考えが、家族の中では最も難しいものになっていった。
光子は自分への遺言を疑っている。
光一は自分の取り分を増やそうとしている。
遥は財産を守ろうとしている。
そして孝子は、そのすべての思惑の間に立たされていた。
